k o i

3年C組

2026-04-09 — day 2
07:45登校
大輝
宿題の話、相槌だけ打つ
悠斗
健太の顔だけ横目で見る
翔太
笑って小テストの話を流す
上履きの踵、直しながら歩く
欠伸を噛み殺し、廊下を行く
健太
納得いかない顔で靴を履く
眼鏡を拭いて、また掛ける
鞄の肩紐、両手で握り直す
大地
階段を二段飛ばしで上がる
莉子
上履き袋、指に巻きつける
芽依
宿題の話、輪の外で聞く
七海
廊下の掲示、素通りする
美咲
水筒の中身、揺らして歩く
さくら
髪をひとつに結び直す
陽菜
眠そうな目で下駄箱を開く
結衣
教室の窓、少しだけ開ける
愛梨
宿題の話に、曖昧に頷く
美羽
宿題の話、聞こえない振り
教室(朝) — 愛梨・美羽・芽依・大輝(見ていた: 悠斗)

始業10分前。窓際の机に鞄を置く音、廊下側の私語。芽依、机に頬杖をついている。

愛梨「芽依、今日目ぇ死んでない?」

芽依「ちょっと寝坊しただけ」

芽依、ノートを開いて視線を落とす。ページはめくらない。

大輝「おーい、昨日の宿題やった奴ー」

誰も返事をしない。大輝、頭をかいてもう一度同じ方を見る。

美羽「…宿題、あったんだ」

大輝「え、マジで言ってる?」

愛梨、芽依の横顔を一瞬見てから、大輝の方に向き直って笑う。

愛梨「美羽また白紙かー、後で見せてもらいな大輝」

昇降口 — 悠斗・健太・翔太(見ていた: 愛梨)

昇降口。上履きに履き替える列。健太が欠伸をこらえながら靴箱を開ける。

健太「小林、昨日の小テスト何点だった」

翔太「え、忘れた。20点くらい?」

健太、靴紐を結ぶ手を止め、翔太を一瞬見る。

健太「ノー勉で20点はさすがに謙遜だろ」

翔太「謙遜って便利な言葉だな。使お」

悠斗、少し離れた靴箱の前で靴を履き替えながら二人を見ている。何も言わない。

翔太「悠斗も聞いてた?ひどくない、健太の疑いの目」

悠斗、肩をすくめるだけで答えない。予鈴のチャイムが鳴り、三人それぞれ廊下へ向かう。

12:30昼休み
大輝
机に肘、窓の外を見てる
悠斗
消しゴムを転がしている
翔太
笑い話、まだ続けてる
弁当箱、蓋をずらして覗く
机に突っ伏している
健太
パンの袋、まだ結んだまま
窓際で伸びをしている
教科書のページをめくる
大地
廊下の声に耳を傾ける
莉子
パンの袋を開けている
芽依
窓の外、ぼんやり見てる
七海
美羽と小声で話してる
美咲
消しゴムのカスを払う
さくら
机の下でスマホを触る
陽菜
頬杖、ノートを眺めてる
結衣
パンを一口かじってる
愛梨
麦茶のパックを刺してる
美羽
七海の話にうなずいてる
教室・購買 — 愛梨・結衣・健太・莉子(見ていた: 大輝・悠斗)

購買前、昼休みの列。焼きそばパンの棚はすでに半分空。

健太「今日も残ってんのそれだけかよ」

莉子、文庫本を片手に持ったまま列に並ぶ。ページの角が折れている。

愛梨「莉子、歩きながら読むのやめなって、また柱にぶつかるよ」

莉子「ぶつかったの一回だけです」

結衣、少し遅れて列の最後尾につく。三人の背中を見てから声をかける。

結衣「何買うか決めた?私まだ迷ってて」

愛梨「メロンパンでいいっしょ、はい決定」

健太、購買のおばちゃんに焼きそばパンを渡され、財布の小銭を数える。

健太「塾の弁当より安いんだよな、これ」

教室の窓際 — 七海・美羽(見ていた: 悠斗・翔太・愛梨)

昼休み、教室の窓際。七海が机に頬杖をつき、外の部活棟を眺めている。

七海「美羽、今日も窓際?」

美羽「……日当たりがいいから」

美羽はノートの端に何かの図案を描きかけて、七海の視線に気づき手で隠す。

七海「手芸部、新入生入った?」

美羽「二人。まだ道具の名前も覚えてないと思う」

七海が伸びをして、窓枠に肘をつく。

七海「うちも一年入ったけど、レシーブより先に体力測定で死にかけてた」

美羽が小さく笑うが、すぐ視線をノートに戻す。

七海「……そういえば飼育委員会の『部屋番号の人』って知ってる?」

美羽「知らない。誰それ」

予鈴が鳴り、七海が机を離れる。美羽はノートを閉じ、続きを描かないまま鞄にしまう。

16:10放課後
大輝
ボールを止め、息を整える
悠斗
イヤホン片耳、階段を降りる
翔太
鞄を肩に、笑いの余韻
河川敷の続き、無言で歩く
スパイクの紐、結び直す
健太
テキストを開き、時計を見る
議事録に日付を書く
悠の背中を少し先に見る
大地
昇降口で靴を履き替える
莉子
パンの袋、丸めて捨てる
芽依
楽譜に指を這わせる
七海
ネット越しに結衣と目が合う
美咲
美羽の消えた角を見る
さくら
台詞を小声でなぞる
陽菜
水槽の水を替えている
結衣
トスの高さを直す
愛梨
下駄箱の前で靴紐結ぶ
美羽
用事へ、一人足を速める
帰り道(川沿い) — 悠・蓮・美咲・美羽

放課後、河川敷沿いの道。四人はほぼ同じ歩調で、同じ方向へ歩いている。

「今日、駅前に新しいラーメン屋できたらしいけど、誰か行かない」

美咲「今日はパス」

美咲、欠伸を手の甲で隠す。

「……蓮、それ、前に閉店した店の跡?」

「ん、何て?」

悠、もう一度口を開きかけるが、結局言わずに首だけ振る。視線を川へ戻す。

「そか」

美羽「私、この先で寄るところあるから、先失礼する」

「手芸部の道具とか?」

バレー部 — 七海・結衣

体育館。ネットの支柱を運ぶ台車が軋む。七海が支柱を立て、結衣がワイヤーを引く。

七海「結衣、そっち先に固定して。私が張るから」

結衣「うん」

ワイヤーがぴんと張る。七海が高さを目で確認し、ゲージを当てる。

七海「2センチ低い。緩めて」

結衣が留め具を緩める。ボールが数個、隅からゴロゴロ転がってくる。1年生が拾いに走る。

結衣「新入生、思ったより多かったね」

七海「名前まだ半分も覚えてない」

七海がゲージをもう一度当て、頷く。留め具を締め直す音。

結衣「七海ちゃんは覚えるの早いから、すぐだよ」

22:30
大輝
打っては消す。またゼロ
悠斗
健太の顔、ふと思い出す
翔太
笑ってごまかした顔のまま
言葉、河原に置いてきた
窓の外、特に見ていない
健太
パンの袋、机の隅に
天井、なんとなく眺める
美羽の後ろ姿、まだ残る
大地
スマホ、充電中で放置
莉子
パンの味、思い出せない
芽依
画面の光だけが部屋に
七海
芽依のこと、まだ気になる
美咲
河原の砂、靴に残ってる
さくら
布団の上、ぼんやり座る
陽菜
机の上、消しゴムの粉
結衣
ネットの音、耳に残る
愛梨
購買のレシート、まだ財布
美羽
用事、実はなかった
DM — 芽依・七海

七海「芽依、今日部活出てた? 声かけたの気づかなかったっぽいから」

芽依「ごめん、ちょっとぼーっとしてた」

既読がついてから、返信まで一分ほど間があった。

七海「無理すんなよー。それより聞きたいんだけど、飼育委員会の『部屋番号の人』ってだれだか知ってる? 名簿に名前ないの」

芽依「さあ…会長以外に誰かいたっけ。委員会のことよく知らない」

七海「だよね。まあいいや、今度直接聞いてみる」

芽依「うん、また明日」

芽依のスタンプが一つ、少し遅れて届いた。七海はそれを見て、既読だけ付けた。

00:40深夜
大輝
送信せず、画面を消した
悠斗
(眠っている)
翔太
スマホの光だけ点いている
天井を見て、寝返りを打つ
(眠っている)
健太
(眠っている)
(眠っている)
トーク画面を開いたまま止まる
大地
(眠っている)
莉子
(眠っている)
芽依
下書きの文字を消していく
七海
(眠っている)
美咲
既読がつかない画面を見る
さくら
(眠っている)
陽菜
(眠っている)
結衣
(眠っている)
愛梨
(眠っている)
美羽
(眠っている)

夜の机の中

大輝 → 莉子 (全て削除)
「なあ、今ちょっといい?」
削除理由: 用件を書く前に指が止まった。これだけだと重い。
「昼休みさ、誰といたん?」
削除理由: 詰問みたいになった。聞きたいのはそこじゃない。
「莉子に言いたいことあって、えっと」
削除理由: 「えっと」の後が出てこない。打っては消してを三回。
「別に大した話じゃないんやけどw」
削除理由: 嘘をついた文面が気に入らず、そのまま全消し。

送信ボタンの上で親指だけが疲れていく。

芽依 → 大輝 (全て削除)
「大輝、明日部活終わったら少し話せる?」
削除理由: 「少し」が何かバレる。書いた瞬間、無理だと分かった
「ねえ、莉子のことどう思ってる?」
削除理由: 聞いてどうする。答えが怖いだけ
「今日はありがとう。楽しかった」
削除理由: 当たり障りがなさすぎて、逆に不自然
「大輝は今、誰が好きなの」
削除理由: これを送れる人間なら、とっくに送ってる

指が止まる場所はいつも同じで、それが答えな気がした。

日記

「愛梨の目、ノート閉じたままの自分ごと見透かしてた。七海の『無理すんなよー』、地味に効いた。」
— 芽依の日記
「芽依、今日もノートめくらなかった。何か抱えてる。でも聞き方がわからない。」
— 愛梨の日記
「宿題また白紙。愛梨に言われた。飼育委員会の部屋番号、知らないって答えた。それだけ。」
— 美羽の日記
「返事が薄い一日だった。見える人にはたぶん見えてる。」
— 悠斗の日記
「DM、4回書いて4回消した。送ってない。」
— 大輝の日記
「『謙遜って便利な言葉だな』だと。はぐらかされた自覚はある。」
— 健太の日記
「謙遜で済ませた。予鈴で流れて助かった。」
— 翔太の日記
「購買でパン買って教室戻る。放課後はネット張り。七海、新入生の話、少しだけした。」
— 結衣の日記